金沢大学 医薬保健研究域医学系 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学

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メッセージ/医局の活動 006 



「側頭骨・頭蓋底外科臨床留学 イタリアGRUPPO OTOLOGICOから」

波多野 都



10月からイタリア北部の小都市、ピアチェンツァにあるGRUPPO OTOLOGICOに留学しております。側頭骨・頭蓋底外科では世界的に高名なマリオ・サンナ先生の手術を学びに来ました。ピアチェンツァは人口10万人程の小さな街ですが、静かで歴史のある美しいところです。
こちらの病院では、手術書で2次元でしか見たことのなかった手術を緊張感とともに術者の傍で見ることができることに感激する日々です。自分の理解していないことにもたくさん気付かされ、まだまだ勉強不足であることを痛感しています。聴神経腫瘍、頭蓋底を破壊するような中耳病変、グロームス腫瘍を勉強するつもりでいます。
月曜から金曜、毎日が手術日ですが、大きな手術はたいてい週の前半に予定されています。聴神経腫瘍は毎週数例と豊富です。手術は3室並列で朝8時半頃からほぼ同時にスタートしますが、サンナ先生の執刀される場面は見逃せません。全く無駄な動作のないリズミカルな手術は、まさに世界でも超一流であることを感じます。また、一般的な中耳手術やあぶみ骨手術、人工内耳にBAHAなどもありますが、チャンスがあれば脳幹インプラントも見ることができるかもしれません。
こちらに来て、何よりも解剖の理解が重要であることを再認識しています。しかし、頭蓋底解剖を立体的に勉強できる機会は残念ながらそうありません。解剖の理解があって、病変への適切なアプローチ、よい治療と結果に結びつくことを日々学んでいます。まず、その判断力をつけることができるようになりたいと思います。幸運なことに、こちらに滞在中に頭蓋底手術コースを受けることができることになり楽しみです。
この臨床留学はかねてからの希望でした。GRUPPO OTOLOGICOに来て感じるのは、私の前を歩き留学された日本の先生方が、しっかりとした道をつくってきて下さったことです。私はその道の上を歩いていることを、サンナ先生だけでなく他のスタッフの先生方からも感じとることができます。ここでの限られた貴重な時間を、今後の診療にも活かせるように大切にしようと思います。また、留学のために自由な時間を与えてくださいました吉崎教授はじめ、医局および同門会の先生方に感謝申し上げます。
GRUPPO OTOLOGICOのビルとサンナ先生。 後ろの世界地図には、各国からのフェローの先生達の出身地を示す多くのピンがついています。
 
街の中心のカバッリ広場。 病院の帰りに広場の傍のバールにてカプチーノで休憩。
 
街のドゥオーモは12世紀の建築