金沢大学 医薬保健研究域医学系 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学

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メッセージ/医局の活動 017 
第1回 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会

2020年9月に日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会が発足し、第1回大会を金沢大学が担当となり、2021年6月30日から7月2日、ホテル日航金沢で開催されました。私は事務局長を担当いたしました。
前身の日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会と日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会の統合により誕生した本学会の目指すべき方向性を、「共創!学問新次元 -Integration for evolution-」を学会テーマとして掲げました。
他の学会同様にCOVID-19の影響を受けました。当初4月、金沢市文化ホールで開催予定でしたが、石川県や金沢市などの公共の施設では飲食禁止となりました。そのため、会場の変更とそれに伴う会期の変更に踏み切りました。また、開催方式の選択は、第1回であること、会員のかなりの方がワクチン接種を受けていること、そして、金沢のコロナ感染が6月に入りずっと制御されていたことなどを総合的に考え、現地開催へと踏み切りました。吉と出るか凶と出るか、ある種、実験的な開催様式となりましたが、総参加人数は約350名と予想を上回る結果となりました。
 特別講演1は、千葉大学大学院医学研究院分子腫瘍学教授・金田篤志先生より、「ウイルス感染に襲撃されるホスト細胞のエピゲノム」と題して、Epstein-Barr ウイルスが感染細胞のクロマチン修飾に及ぼす影響、ヘテロクロマチン領域に眠っている遺伝子のエンハンサーを活性化して感染細胞の形質転換を誘発する「エンハンサー侵襲」についてご講演いただきました。
特別講演2は、金沢大学医学系免疫学・WPIナノ生命科学研究所教授・華山力成先生よりエクソソームと免疫研究の第一人者である先生に「細胞外小胞エクソソームによる免疫の制御機序」というテーマでご講演いただきました。従来の獲得免疫系の異常による自己免疫系疾患だけでなくマクロファージなどの自然免疫系の異常による自己炎症性疾患という観点の紹介とマクロファージ制御因子としてエクソソームの役割についてご講演いただきました。
教育講演では、広島大学病院漢方診療センターの小川恵子教授より、「新型コロナウイルス感染症に対する漢方治療」では日本の漢方医療の特長であるエキス剤の存在、そして、これらの製剤をコロナウイルスを含む感染症のどのステージに同様に使い分けてゆくか、その考え方を中心にご講演いただきました。
また、5つのパネルディスカッションとシンポジウムについて、いずれもその分野で活躍される国内の先生方より講演がありました。そして、一般演題は、口演60演題、ポスター61演題、合計121演題の発表がありました。
本学会の新企画として、日本耳鼻咽喉科学会において多大なる仕事と貢献をされた先生を対象とした特別賞、現在活躍中で未来の免疫アレルギー感染症を担うことが期待される先生を対象とした学会賞を設けられました。学会賞は福井大学・高林哲司先生、旭川医科大学・高原幹先生、小生が受賞しました。そして、第1回特別賞は順天堂大学・池田勝久先生が受賞されました。耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会の名物企画であった奨励賞は、本学会でも引き継がれました。これまでになくハイレベルで本当に甲乙つけ難い内容で、新次元の奨励賞へとバージョンアップしたことを実感されました。第1回奨励賞は福井大学・木戸口正典先生が受賞されました。
最終日の7月2日は、ICD講習会を開催いたしました。「新型コロナウイルス感染症と感染対策感染制御」として、在原病院の木村百合香先生から、新型コロナウイルスに流行期における耳鼻科診療について、川崎医科大学の兵行義先生から、新型コロナウイルス感染症流行下におけるネブライザー療法と「正しくおそれる」ことについて臨床的な面からご講演いただきました。そして、金沢大学市村宏先生から石川県に流行しているコロナウイルス株の話からウイルス学的な特徴まで詳しく概説いただきました。そして、最後に新型コロナウイルス感染症のニュースコメンテータとしても有名な愛知医科大学の三鴨廣繁先生から、コロナウイルス感染症の基礎的な部分から臨床的な部分までテンポよく概説いただき充実した講演となりました。
新型コロナウイルス感染症が流行している中、現地開催という初の試みでしたが、ご参加の先生方のおかげを持ちまして、クラスターを生じることもなく、無事会期を終えることができました。ご参加いただきました皆様には感謝申し上げます。