金沢大学 医薬保健研究域医学系 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学

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研究室紹介 [各分野紹介:耳] 
 

研究室紹介「世界に通用するリサーチを」


 主要な研究テーマは、上咽頭癌では「Epstein-Barrウイルスとの関連および転移機構」、頭頸部癌では「転移機構」「新規化学療法」、嗅覚では「嗅覚障害の他覚的診断」、神経耳科では「感音難聴モデルを用いた神経可塑性研究」「顔面神経モデルを用いた神経修復機構」などです。これらの研究の成果は、ハイレベルの英文学術誌に数多く発表されています。
 

耳科学分野


 耳科学分野においても、得られた成果が実際の臨床に還元可能なテーマを理想としています。また臨床医だけが可能な研究として、難治性疾患の新しい治療法の開発に結びつくような臨床研究を重視して医師主導の臨床試験を推進しています。
 
 

1,聴覚中枢


  聴覚研究については、中枢神経伝導路についての研究を主におこなっています。聴覚中枢の神経科学研究は、解剖学的または生理学的に多くの研究がなされていますが、脳や心が「音」から大きな影響を受けることより心理学に分類されることがあります。音楽や会話を楽しむことも、左右の耳からきいた音が聴覚中枢で統合し情報処理されることで、はじめて感じることができます。聴覚はQOL(Quality of Life生活の質)にとって欠かせない感覚で、これに聴覚中枢が深く関わってきます。
 先天性難聴や成人になってからの後天性難聴は内耳での異常が原因となることがほとんどですが、これが上行性に聴覚中枢に影響することがよく知られています。近年、人工内耳手術の適応が広がり、先天性高度難聴の小児や後天性高度難聴の成人にとっても一般的な手術治療になりました。正常の蝸牛では内・外有毛細胞などから成るコルチ器、ラセン神経節細胞がみられます(図1)。内耳性難聴では有毛細胞が変性消失するため、この変性した有毛細胞の代わりにラセン神経節細胞を刺激して聴覚中枢に情報を伝える治療が人工内耳です。内耳性難聴によっておこる聴覚中枢の変化を知ることが人工内耳装用前後での脳の変化を解明するうえで、ますます重要になってきています。私達は先天性難聴モデルや急性感音難聴モデル動物にて、その聴覚中枢神経核での変化を解剖学的、生理学的に検討する研究をおこなっています。


図1 蝸牛コルチ器 図2 蝸牛神経核(前方腹側核) 図3 外側毛帯背側核
 
図1 蝸牛コルチ器 有毛細胞からラセン神経節細胞へ(HE染色)
図2 下丘へ投射する蝸牛神経核(前方腹側核)の神経細胞(逆行性ニューロトレーサー法による)
図3 外側毛帯背側核から下丘への神経投射(Nissl染色と逆行性ニューロトレーサー法による)
 

2.PAX2遺伝子異常における聴覚障害


 腎コロボーマ症候群はPAX2遺伝子のヘテロ変異により発症し、先天性腎尿路奇形とコロボーマ(正常眼球組織の一部を欠損するもの)を合併する常染色体優性遺伝疾患です。腎症状は、腎低異形成、膀胱尿管逆流、重い例では末期腎不全に至り、また眼症状は視神経欠損症、視神経異形成、小眼症等の報告があります。さらに感音難聴やアーノルドキアリT型奇形、靱帯弛緩や発達障害を合併する例の報告もあります。聴覚障害については、7%程度の患者に合併するとの報告がありますが、その聴力障害の程度や障害のタイプについてはこれまでにその詳細は明らかになっていません。現在この極めてまれな腎コロボーマ症候群における聴覚障害の詳細について当院腎臓内科と共同研究中です。